2023年度第18回「ロレアルーユネスコ女性科学者 日本奨励賞」 日本の科学をけん引する若手女性研究者4名を表彰 女子中高生の理系キャリアを後押しするパネルディスカッションも併催

30.08.2023 - Commitment

世界最大の化粧品会社ロレアルグループ(本社:パリ)の日本法人である日本ロレアル株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ジャン-ピエール・シャリトン)は、2023年度 第18回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者4名の発表および授賞式を8月29日(火)に国際連合大学 ウ・タント国際会議場にて実施しました。また、パネルディスカッションでは、OECD加盟国最低とされる日本の女性研究者の割合や、「研究や科学は男性のもの」といったジェンダーによるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)がある中で、科学・教育分野の第一線で活躍する女性のパネリストたちが、文理選択に悩む女子中高生約20名に対し、理系キャリアを選択する際に重視したことなど自身の経験を通じてアドバイスを送りました。

 

 

2023年度 第18回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞者(4名)

2005年に創設された本賞は、日本国内で物質科学、生命科学の2分野における博士後期課程に在籍または同課程に進学予定の女性科学者を対象としています。各分野からそれぞれ2名(計4名)が毎年選出され、受賞者には奨学金100万円が贈られます。審査では、研究の達成度に加えてテーマ設定のユニークさや、個々の研究のプロセスで出会う困難への対処の仕方、研究時の発見や開発に至る過程での科学的解釈に対する発想などに着目して審査されました。

 

■「物質科学」分野

瀬尾 珠恵 (28)

北海道大学大学院 総合化学院 分子化学コース 有機元素化学研究室 

  • 研究内容:パラジウム触媒を用いたメカノケミカルクロスカップリング反応の開発
  • 受賞理由:有機溶媒由来の廃棄物やコストを抑えることができる環境調和型の有機合成反応の開発に成功し、メカノケミカル合成の実用化に大きく貢献。今後のメカノケミカル合成に特有の触媒開発などへの貢献が期待できる。

 

富永 愛侑 (26)

東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 JAXA宇宙科学研究所 海老沢研究室

  • 研究内容:宇宙の始まりから元素の拡散過程を経て物質の最終段階に至るまでの観測手法の開発と解析的研究
  • 受賞理由:天文衛星プロジェクトの最前線で衛星を用いた多くの研究プロジェクトに参加し、検出器やデータ転送に関する問題の解決に貢献する成果をあげ、衛星実験における多くの問題に対して解決の糸口を提供。これからも天文学に関する実験への貢献が期待される。

 

■「生命科学」分野

石川 萌 (28)

京都大学大学院 農学研究科応用生命科学専攻 生物機能制御科学分野

  • 研究内容:コレラ菌のエネルギー生産酵素NQRの構造と反応メカニズムの解明
  • 受賞理由:クライオ電子顕微鏡を用いてNQRの構造と電子反応メカニズムを初めて解明。今後のNQRを標的とする新しい抗菌剤開発の進展が期待される。

 

堤 友美 (30)

大阪大 大学院 歯学研究科 系統・神経解剖学講座

  • 研究内容:咀嚼筋に生じる感覚の中枢情報処理機構の解明
  • 受賞理由:ものを食べることによって、人がなぜ満足感を得、幸せな気分になるかなど情緒面での意味が明らかになる可能性が期待される。

※所属は2023年2月末応募当時、年齢は2023年8月29日時点のものです。

 

 

第二部:パネルディスカッション 「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」

パネリスト:

  • 川合 眞紀(自然科学研究機構 機構長)
  • 田中沙弥果(特定非営利活動法人Waffle 理事長)
  • 藤代有絵子(特定国立研究開発法人 理化学研究所 基礎科学特別研究員、2020年度ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞受賞者) 
  • 楠田 倫子(日本ロレアル株式会社 ヴァイスプレジデント、 コーポレート・レスポンシビリティ本部長)

 

経済協力開発機構(OECD)によると日本の女性研究者の割合は17.5%と加盟国中最下位であり、大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、STEM(科学・技術・工学・数学)分野へ進んだ女性の割合は、自然科学(27%)と工学(16%)の2分野で、比較可能な36カ国中最低です。その大きな要因とされているのが、文理選択時のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)です。本セッションでは、これからのキャリアを考える女子中高生約20名を会場に招き、科学・教育分野の第一線で活躍するパネリストから理系キャリアを選択する際のアドバイスが送られました。女子中高生たちはとても熱心に参加し、ある参加生徒からの「理系に進学したいと思っていますが、女子が理系に進むと職業選択の幅が狭まると言われました、どうでしょうか」という質問に対し、川合 自然科学研究機構 機構長は「まったく逆。むしろ理系に進めば選択と可能性の幅が広まる」と指摘。ロレアル 楠田は「近年デジタル人材へのニーズが高まり、獲得合戦が起きています。私は文系ですが、今学生だったなら、おそらくデータサイエンスなどに進むという手もあったのではと思います」といったコメントがあり、女子中高生の参加者は勇気づけられたように大きくうなずいていました。
日本ロレアルは、長年取り組んできた女性研究者の支援に加えて、昨年からは女子中高生への啓発活動も始めました。これからも「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」という本活動の理念のもと、科学分野で活躍する女性たちの更なる飛躍と地位向上を目指し、この活動を推進してまいります。

 

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